第992話 遅すぎた！

その一笑いの後、天野奈々は記者たちの前から姿を消した。この瞬間から、彼女はもう芸能マネージャーではなくなったのだから。

スーパースターを辞め、海輝から独立し、今や彼女に残されているのは墨野社長とのマネジメント契約だけだった。彼女は海輝の所属タレントではなくなったが、墨野宙は依然として彼女の専属マネージャーだった。

記者会見を終えた後、天野奈々はスーパースターのオフィスに立ち寄った。

この会社を設立しようと決めた時から今日に至るまで、天野奈々は実に多くの感慨を抱いていた。

中村さんは彼女が荷物をまとめる様子を見ながら、胸が痛んだ：「スーパースターは、永遠にあなたのものよ。」

天野奈々は中村さんに微笑みかけた：「あなたを信じています。私がいなくても、スーパースターを導いていけるはずです。」

「これからどこへ行くの？送っていくわ。」中村さんは急いで天野奈々の段ボール箱を運ぼうとした。

「車まで運んでくれれば十分です。私はまだ暗い場所に行かなければならないので。」天野奈々は中村さんに答えた。

颯爽とした天野奈々は、また一度、公衆の前から姿を消そうとしていた。モデルから女優へ、女優からマネージャーへ、そして今やマネージャーも辞めた。芸能界を遊び場のように扱い、誰も彼女を左右することはできない。なぜなら彼女は本質的に、虚栄や名利を追い求める人々とは違うのだから。

記者たちは、自分たちは天野奈々に招かれたと言った。

しかし、天野奈々が復帰を宣言してから今まで、どの時も記者たちが競って取材に来たのではなかったか？

メディアはその後、天野奈々の記者会見について報道した。夏目栞のファンたちは理解を示したが、大多数の人々は依然として敵意を持っていた。

しかし、たとえ彼らがどんなに悪く言おうとも、天野奈々が気にしない限り、彼らの存在は自ら恥をかくようなものだった。まるで綿に拳を打ち込むように、まったく力が入らなかった。

その後、天野奈々は彼女が言っていたその暗い場所、警察署へ向かった。

少なくとも、夏目栞の命を奪った人物に会いに行かなければならなかった。

目の前の佐藤社長は、手入れを怠ったせいで、唇の周りには髭が生え放題で、まるで原始人のようだった。囚人服を着て、手錠をはめられ、表情は完全に虚ろになっていた。