第1018章 初舞台

「私も偶然彼らを知っているだけだよ。この後輩たちは本当に実力がある」冬島徹は答えた。「だから、感謝すべきは私の方だ。彼らの才能を見出してくれて」

中村さんは冬島徹をじっと見つめたが、ちょうどその時、携帯が鳴った。以前からの古い知り合いからだった。

「中村さん、あなたの過去の助けのおかげで、私はまだ業界で食いつないでいるよ。最近あなたが新人を育てていると聞いて、すぐに連絡したんだ。今、大学生音楽祭が開催されているから、あなたのグループを大学に呼べるよ」

「この公演には歌姫の高橋琴美も学校のステージに登場するから、歌姫の人気に便乗する形になるね」

「どうだい?」

このような時に、助けの手を差し伸べてくれる人は、本当の友人だ。中村さんはすぐに返事をした。「この恩は必ず忘れないわ」

「そんな大げさな。私も天野奈々がまた東京に戻ってくる予感がして、自分のために後ろ盾を作っておきたいだけさ」

中村さんはその裏事情を理解していた。誰かが便宜を図ってくれれば、当然その恩は忘れない。

「安心して」

「よし、じゃあ新人のトレーニングを急いでくれ」

冬島徹は中村さんと相手の会話を最初から最後まで聞いていた。どうやらS.A.Jの初公演が決まったようだ。こんなにも早く機会が訪れるとは思わなかった。

本当に早いな……

彼は思った。中村さんもこの四人が彼女にもたらす達成感を、少しは味わうべきだろう。

いや、急いで味わうべきだ……

その後、中村さんはこの良いニュースをS.A.Jのメンバーに伝え、はっきりと彼らに言った。「あなたたちは大学時代に多くの公演経験があるし、私もあなたたちの舞台姿を見たから問題ないわ。でも今は学校を出て、芸能界全体と向き合うことになる。だから最も真剣な姿勢で臨まなければならない。もし最初の公演が失敗すれば、基本的にあなたたちのキャリアは終わりということよ」

四人は中村さんの厳しい言葉に、この公演を非常に重視するようになった。

結局、この公演の後、彼らは正式にデビューするのだから!

「わかりました、私たちは全力を尽くします……」四人は非常に興奮して中村さんに答えた。

……