第1020章 それなら私は目を皿にして待っています!

極めて聡明な両親から生まれた天才息子なら、どんな才能を持っていても不思議ではない。

ただ、墨野月は賢いだけでなく、少し変わっているようだ……

「東京に戻ったら、一緒に彼を検査に連れて行きましょう」

「うん」天野奈々はうなずいた。夫婦二人にとって、今は業界のことの他に、三人の子どもたちが生活の中心になっていた。

特に今は娘がますます可愛く成長していて、墨野宙にとってはこれが大きな試練だった。男として、外では鉄血の名を轟かせているが、娘を見ると、どうしても子どもに近づきたくなってしまう。

これからこの子は、彼によって甘やかされ放題になるだろう……

……

天野奈々はアメリカに留まり、一方中村さんのところでは、S.A.Jも徐々に軌道に乗り、活動が増えて充実してきた。

しかし、中村さんはグループをあらゆる舞台に立たせることを急がなかった。彼女は量よりも質を重視していたからだ。

露出のポイントは絶妙でなければならない。また、彼女は天野奈々の常套手段を学び、逆の道を行くことにした。今のこの業界では、観客は予想外のことを好むのではないだろうか?

今、中村さんはグループに露出度の高い番組をいくつか入れるのに忙しく、冬島徹は中村さんの一挙手一投足に注目していた。ただ、彼はあまりにも忍耐強く、しばしば中村さんに策を授けていたため、加藤静流と中村明音は彼に対する警戒心を徐々に解いていった。もしこの人に本当に問題があるなら、数ヶ月もの間我慢して、何もしないだろうか?

冬島徹はただより慎重になっただけだった。そして、この数ヶ月の間、彼は真野薇と断続的に会っていた。

前回のオーディションで恥をかいて以来、真野薇は痛みを教訓に心を落ち着け、演技を磨いていた。

確かに、彼女の現在の知名度があれば、そこまでの演技力は必要ないかもしれない。しかし、あの日のアメリカのプロデューサーの侮辱を思い出すと、長く続けていくためには、演技というものは多少なりとも必要だと考えた。

二人が結託し、冬島徹は真野薇に中村さんの一挙一動を明確に知らせていた。