しかし、すぐに彼女は否定した。
池村琴子にそんな能力があるはずがない。
幼い頃から養子に出された身の上で、高橋家にもまだ認められていない彼女に、和男を守る力なんてあるはずがない。
「お父さん、私たちに何か敵がいるの...」彼女が話しかけた途中、高木財源の冷たい眼差しに怯んでしまった。
「日本が暴力団掃討を始めてから、私はとっくに足を洗っている。この何年もの間、せいぜい人を汚すくらいで、決して人は殺していない。それなのにお前は、もう若くないのに人殺しを考えるとは、誰に言われた?」
高木朝子は俯いたまま、歯を食いしばって、心の中の言葉を飲み込んだ。
人殺しは、もう初めてではなかった。
最初がうまくいったから、二回目も三回目もうまくいくと思っていたが、まさか壁にぶつかるとは思わなかった。