高橋姉帰の顔が青くなったり赤くなったりした。
鈴木羽の録音のことは、ずっと彼女の心の中で引っかかっていて、弁解の最大の弱点となっていた。
原蓮が携帯電話は壊れたと言ったことを思い出し、高橋姉帰は落ち着いた様子で言った。「録音のことは知らないわ。それに、本当に録音したのか、それとも誤って押してしまっただけなのかもわからないでしょう。証拠もないのに、でたらめを言わないでください」
池村琴子は冷笑いを浮かべたまま黙っていた。携帯電話は山の下で見つかったことを告げなかった。
今は携帯電話がひどく壊れているが、修理できないわけではない。
緊迫した雰囲気の中、高橋姉帰が先に妥協した。「お父さんと喧嘩して、プロジェクトからも手を引いたって聞いたわ。このプロジェクトは本当に重要なの。あなたさえ良ければ、一緒に家族の事業を大きくしていけるのよ」
池村琴子は冷笑して言った。「家族の事業は兄さんがいれば十分よ。私たちがいなくても、大きくなっていくわ」
高橋姉帰は気にしない様子で笑い、優しい声で言った。「でも今回のプロジェクトは違うの。本当にあなたと一緒にやりたかったの。嫌なら仕方ないけど」
「今、家は多くの勢力に狙われているわ。今回のプロジェクトがうまくいかなければ、信用を失うだけでなく、高橋家全体が危うくなるかもしれない」
池村琴子は唇を噛み、眉をひそめた。
高橋姉帰は彼女を一瞥し、得意げに笑った。「だから今回は私の友達が手を貸してくれるの。普通の人じゃないわよ」
池村琴子は彼女のくだらない話を聞きたくなく、立ち上がろうとした時、高橋姉帰がまた言った。「『W組織』を知ってる?」
案の定、この言葉で池村琴子の顔に驚きの色が浮かんだ。
高橋姉帰は誇らしげに顎を上げた。
彼女は知っていた。日本中の人々がこの組織のことを知っており、何度もトレンド入りしたが、いつも伝説の中の存在で、実際に接触した人はほとんどいない。
上流階級の人々だけが知っているが、この組織は実在し、様々な任務を引き受けている。殺人や違法行為に関わらない限り、どんな任務でも引き受け、ほぼ完璧に遂行する。
彼女は中の人と接触できるだけでなく、友達にもなれた。これは多くの人が想像もできないことだ。なぜなら、この組織の人々は外部との接触や身分を明かすことは滅多にないからだ。