第158章 高橋姉帰の慌て

全員の視線がその携帯電話に向けられた。特に高橋姉帰は、目を大きく見開き、自分の目を疑うかのようだった。

携帯電話は破壊されたはずなのに、なぜ彼女の手に渡ったのだろう?

池村琴子が携帯電話を操作するのを見ながら、高橋姉帰は目を凝らし、呟いた。「その携帯電話はどこから手に入れたの?こんなボロボロの携帯、母さんのものかどうかも分からないでしょう」

しかし、彼女の言葉に誰も反応しなかった。

池村琴子は既に携帯電話の電源を入れ、見慣れた起動音が鳴り響いた。まるで死の音楽のように、高橋姉帰の心臓が飛び出しそうになった。

彼女は胸を押さえ、大きく息を吐いた。

高橋敬一が最初に気付き、すぐに高橋姉帰に近寄って心配そうに尋ねた。「姉帰、大丈夫?」

高橋姉帰は首を振り、無理に答えた。「大丈夫よ、ちょっとお腹が空いただけ。低血糖かもしれない」

ちょうど正午で、昼食の時間だった。

高橋敬一は池村琴子を見て注意を促した。「みんなまだ食事してないから、何かあるなら食事の後にしましょう」

池村琴子が携帯電話を取り出した時点で、彼女が何かを企んでいることは分かっていた。

なるほど、兄と三兄が姉帰を食事に誘った理由が分かった。ここで彼女を待ち受けていたのだ!

直感的に、その携帯電話の中身は良いものではないと分かった。姉帰の反応を見れば、中身は彼女にとって害のあるものだと分かる。

結果がどうであれ、みんなでこの食事を終えてほしかった。

池村琴子は高橋敬一を一瞥し、彼の嫌悪の表情を見て笑いながら携帯電話をしまった。「そうですね、食事をしながら話しましょう」

彼女は立ち上がり、ついでに高橋姉帰の下にあったお酒を取り上げた。「そういえば、このお酒は賞味期限が切れていたわ。別のを持ってきます」

高橋姉帰は食卓に着くなり、ポケットから何かを取り出した。池村琴子は高橋姉帰の動きを余光で見ていた。高橋姉帰の動きは素早かったが、彼女は見逃さなかった。

高橋姉帰は中に何かを入れたのだ。

やはり性根は変わらない。高木朝子と同類で、人を害することしか考えていない。

お酒を取り上げられても、高橋姉帰は平然とした表情を保ち、下唇を噛みながら、その携帯電話から目を離さなかった。

今の彼女の心はその携帯電話のことでいっぱいで、他のことに気を配る余裕はなかった。