第293章 お前だったのか

贖罪……

池村琴子の目が熱くなった。

その言葉は彼女の固い心に穴を開け、温かい流れがゆっくりとその柔らかな部分を包み込んでいった。

叔父を救うとき、彼が死を覚悟していたことを思うと、彼女の心は思わず震えた。

彼女はずっと山本正博が冷酷だと思っていたが、実は、彼は自分に対してより厳しかったのだ。

なるほど、あの数日間彼が病院にいた理由がわかった。

「叔父があなたを探していたわ」池村琴子は目が少し赤くなり、「なぜ叔父を救ったのがあなただと教えてくれなかったの?」

「大したことじゃない」山本正博は彼女を見つめる眼差しが熱く、山間の清流のように澄んでいた。

実は、彼が言いたくなかったもう一つの理由は、彼女が感謝の気持ちだけで彼と一緒になることを望まなかったからだ。

その深い目と目が合うと、池村琴子は慌てて目を伏せ、まつ毛が震え、心臓が激しく鼓動した。

感動しないはずがない、彼は彼女の家族を救ったのだから。

彼は贖罪だと言った。彼はずっと彼女の気持ちを理解していたのだ。

おばあさんの死は高木朝子のせいだが、彼にも責任があった。でも後から考えると、彼の本意は少なくとも良かった。ただ誰も高木朝子が手加減しないとは予想していなかった。

彼が贖罪と言ったのは、実はおばあさんの死の罪を贖うためだった。おばあさんの死は常に彼らの間の心の結び目だった。彼は命を賭けて彼女を救い、さらに彼女の叔父も救った。彼女の心がどんなに冷たくても、今はその尖った部分が磨り減っていた。

「私を救ってくれたのはあなただったのか」鈴木正男は感慨深げに彼の肩を叩いた。

他の人とは違い、彼はずっと山本正博を有能で素晴らしい若者だと思っていた。彼だけでなく、おそらく会社の管理者たちも彼に良い印象を持っていたはずだ。

彼はまだ覚えている。当時山本正広と父親が相次いで亡くなり、山本グループ全体が分割されそうになった時、彼がこの会社を引き継いだ時は誰も期待していなかった。しかし彼は一人で会社をここまで大きく成長させた。

その後、彼が高橋仙を救うために命を賭けたことを知り、さらに感慨深く残念に思った。しかし思いがけず、この若者は死なずに、さらに自分も救ってくれた。

仙のお腹の子供は山本正博の子供だ。子供のためにも、正妻の方が良い。