第293章 お前だったのか

贖罪……

池村琴子の目が熱くなった。

その言葉は彼女の固い心に穴を開け、温かい流れがゆっくりとその柔らかな部分を包み込んでいった。

叔父を救うとき、彼が死を覚悟していたことを思うと、彼女の心は思わず震えた。

彼女はずっと山本正博が冷酷だと思っていたが、実は、彼は自分に対してより厳しかったのだ。

なるほど、あの数日間彼が病院にいた理由がわかった。

「叔父があなたを探していたわ」池村琴子は目が少し赤くなり、「なぜ叔父を救ったのがあなただと教えてくれなかったの?」

「大したことじゃない」山本正博は彼女を見つめる眼差しが熱く、山間の清流のように澄んでいた。

実は、彼が言いたくなかったもう一つの理由は、彼女が感謝の気持ちだけで彼と一緒になることを望まなかったからだ。

その深い目と目が合うと、池村琴子は慌てて目を伏せ、まつ毛が震え、心臓が激しく鼓動した。