第308章 諦めた、本当に諦めた

池村琴子は笑顔で松田柔子を見つめ、女性からの敵意を感じ取った。

この松田柔子は仕事のためだと言い張っているが、先ほどの行動はあまりにも親密すぎた。

山本正博の期待に満ちた眼差しに応え、池村琴子は眉を上げ、静かに言った。「もちろん、気にしませんよ」

気にする立場でもないし。

その言葉を聞いて、山本正博の目の輝きが徐々に薄れていった。

気にしない、本当に気にしていないのだろうか?

池村琴子が無関心そうに笑っている様子を見て、山本正博の心に焦りが湧き上がった。

松田柔子は嬉しそうに彼に微笑んで言った。「では、部屋で話しましょう。前回おっしゃった投資案について考えてみたんですが...」

「可乃子さん」山本正博は彼女の言葉を遮った。「申し訳ありませんが、今日は仕事の話をする気分ではありません」