第286話 彼女を許す

高橋敬一は目を閉じ、再び開くと、池村琴子の笑みを浮かべた瞳と真っ直ぐに見つめ合った。

美しい瞳は笑っていたが、その笑みは心からのものではなかった。

彼女は彼が何を言おうとしているのかを知っていた。

心臓が鈍く打ち付けられるような痛みを感じ、罪悪感から顔を背けた。

彼は歯を食いしばり、高橋を押しのけ、部屋の中の人々に向かって言った。「分かってる。俺が愚かだと思ってるんだろう。実の妹を大事にせず、養女を大事にするなんて。でも考えてみてくれ、この養女も、かつては俺たちの実の妹だったんだ……」

彼は高橋謙一の方を見て、蒼白い顔に苦笑を浮かべた。「数ヶ月前まで、お前は姉帰に会いに海外に行くって言ってた。姉帰の結婚式に出るって言ってた。たった三ヶ月で、みんながこんな風になってしまうなんて……」

彼は哀れむように高橋姉帰の前に歩み寄り、彼女の醜く変わり果てた顔を見つめ、そして脇の下の松葉杖に目を落とした。

高橋敬一の露骨な視線に、高橋姉帰の涙がすぐさま溢れ出した。

恥ずかしさと居心地の悪さが、虫のように彼女の体の細胞一つ一つを蝕んでいった。

「みんなは彼女を悪人だと思ってる。でも俺には、彼女が家族だった記憶がある」彼は高橋姉帰の失われた片足を見つめながら、次第に虚ろな目をしていった。

部屋の中で誰も応答せず、高橋敬一の声が空間に漂い、空虚で悲しげだった。

山本正博は腕を組んで扉に寄りかかり、唇の端に嘲笑を浮かべた。

見覚えのある光景だ……

かつて自分もこんなことをしていた。高木朝子が何をしても、たとえ彼女が悪事を重ねているのを知っていても、その責任感から目を曇らせていた。

この高橋敬一も、かつての自分と同じだ。ただ残念なことに、もっと多くのものを失って初めて目が覚めるのだろう。

「家族か……」高橋謙一が嘲笑うように言った。「その通りだ。彼女はお前一人の家族だ」

「彼女はお前を殺そうとしなかったし、占い師にお金を渡してお前を騙そうともしなかった。お前が彼女を家族だと思うのは勝手だが、他人に道徳的な押し付けはするな」

彼は首を傾げ、池村琴子の方を見て、意地の悪い笑みを浮かべた。「どうやって気を晴らしたい?三兄が付いてる」

その簡潔な言葉が高橋敬一の顔に痛烈な一撃を与えた。

高橋敬一の顔色が青ざめたり赤らんだりし、高橋姉帰は恐怖に後ずさりした。