「生きてる?」鈴木羽は理解できなかった。
「妹を守ったのは本当だが、死んだのは嘘だ」高橋謙一が話を引き継いだ。
「つまり...山本正博は死んでいないということ?」鈴木羽は一瞬固まり、そして笑顔になった。「本当?生きているなら、それは良かった!」
山本正博と高木朝子には過去があったとはいえ、生きているほうが死んでいるよりもずっといい。そうでなければ、自分の娘が一生人の命を背負う罪悪感を抱えることになってしまう。
仙と南條夜の婚約破棄のことを思い出し、鈴木羽はすぐに理解した。
「だから南條夜と婚約を破棄したのね。彼が生きていると知って、南條夜を受け入れられなかったの?」
池村琴子は首を振った。「実は私は山本正博が生きているのをずっと前から知っていたの。でも確信が持てなくて、南條夜と一緒にこの芝居を打ったの」