第318章 高橋仙、私はあなたを信じていいの

彼女が想像していたよりも早く返信が飛び込んできた：「分からない、どうしたの？」

高木阿波子が素早くメッセージを編集し、送信しようとした瞬間、携帯電話が高木財源に奪われた。

「高橋仙に送るのか？」

高木阿波子は一瞬固まり、目に一抹の動揺が走った。

高木財源は携帯電話を弄びながら、鋭い目で彼女の顔を見つめた：「まだ確定していない話だ。もし竹内雅子が嘘をついているなら、お前が高橋仙に送るのは偽情報になる」

高木阿波子は唇を噛んで黙っていた。高木財源はにこやかに携帯電話を彼女に返した：「明日、私が竹内雅子に確認してから連絡すればいい。安心しろ、今は彼女に手を出す気はない。こういう手柄を立てることなら、むしろお前にやってほしいくらいだ」

彼女はこんなことで手柄を立てようとは思っていなかった。

高木財源の言い方に高木阿波子は反感を覚えた。

しかし今は確かに竹内雅子の一方的な話しか聞いていない。真相がどうなのかはまだ分からない。

「じゃあ、明日竹内雅子と確認してから私に教えて」高木阿波子は高木財源と争うつもりはなく、腕を組んで車の中で目を閉じた。

翌日、池村琴子は鈴木邸で目を覚ました。夜が明けたばかりの時間に、近籐正明からの電話で起こされた。

「あの人から連絡があった？組織の内部まで来たって聞いたけど」

ビデオ通話の画面で、近籐正明の整った顔に驚きの色が浮かんでいた。

「あなたでも彼女の情報は分からないの？」池村琴子は体を起こし、眠気が一気に覚めた。

「偽名を使っているけど、持っていた信物は確かに師匠のものだ」

池村琴子は暫し考え込み、心が落ち着かなかった。

その人は意図的に身分を隠しているのに、師匠の品を簡単に渡してきた。これは組織内にコネがあるということだ。

師匠は生前、死後は木村家の面倒を見てほしいと言っていた。もし誰かが唐伯虎の絵を持ってきたら、それは彼の子孫が来たということだ。

「その絵は本物なの？」池村琴子は唇を引き締め、瞳が揺れた。

師匠の子孫なら、必ず面倒を見なければならない。

「W」組織が存在できているのも師匠のおかげだ。師匠が彼女をこの道に導いてくれたのだから。

「W」組織の前身は師匠の「L」組織だった。後に師匠が組織を彼女に託し、彼女が組織を整理して「W」と改名した。