第330章 このことは彼女が必ず関わる

しかし彼女が反応する前に、後藤若奈が先に彼女を見つけてしまった。

彼女は小林悦子に尋ねるような目を向け、高橋忠一も振り向いた。

小林悦子は汗ばんだ手のひらを握りしめ、足が地面に釘付けになったかのように動けなかった。

高橋忠一は後藤若奈に何か二言三言話してから、小林悦子の側に来て「小林さん」と声をかけた。

小林悦子は極度に困惑し、手提げ袋を高橋忠一に押し付けて逃げ出そうとしたが、「待って!」と呼び止められた。

高橋忠一は早足で近づき、手提げ袋を横のテーブルに軽く置き、テーブルを軽く叩いて「ここで待っていて」と言った。

そして彼女の前にメニューを置き、優しい声で「食べたいものや飲みたいものを注文して、私の仕事が終わるまで待っていて」と言った。

小林悦子は心臓が跳ね、その言葉に顔から首まで赤くなった。

高橋忠一がこんなに親切にしてくれるとは思わなかった。

後藤若奈の探るような視線に気づき、小林悦子は慌てて頭を下げ、小声で「授業があるので」と言った。

今日の午後は授業があり、今日は抜け出してきたのだった。ここに残りたい気持ちはあったが、理性が冷静さを保たせた。

「じゃあ、送って行く...」

「いいえ、結構です」小林悦子は彼の言葉を遮り、心臓の鼓動を必死に抑えながら、うつむいたまま外へ走り出した。

今回、高橋忠一は彼女を引き止めなかった。

カフェを出ると、小林悦子は胸に手を当て、大きく息を吸った。

このシャツで、彼女は自分と高橋忠一との距離を実感した。

たとえ彼を誘惑しようと思ったとしても、それは一時的な考えに過ぎず、後藤若奈を見た瞬間、彼女は尻込みしてしまった。

もういい、違う世界の人なんだから。

そう思うと、小林悦子の鼻が痛くなり、目も熱くなってきた。ゆっくりと涙が視界を曇らせた。

天井を見上げると、とても豪華だった。ここは自分の家が経営しているので、理屈の上では多くのクラスメートより恵まれているはずなのに、高橋忠一の前では、その劣等感が一気に湧き上がってきた。

「高橋社長、あの日私は確かに、鈴木羽と山田義隆が親密な様子を見ました。長時間観察していて、写真も一枚だけではありません」

竹内雅子と高橋進が小林悦子の前を通り過ぎた。