彼は誠治が一体誰を「ごろつき」したのか分からなかった。誠治の性格からして、そんなことをするはずがない。美人局に引っかかった可能性が高い。
誤解さえ解ければ、留置所から保釈されるだけでいい。
彼は待ちきれず、誠治を中から出そうと焦って外に向かった。
そのとき、ボディーガードが電話を受け、木村爺さんに言った。「社長、病院から連絡がありまして、高橋さんが入院したそうです。」
「高橋仙?」木村爺さんは白い眉を震わせ、彼女のお腹の子供のことを思い出し、声を低くして「子供に何かあったのか?」
「はい、子供は助かりませんでした。」
木村爺さんの心臓が激しく痛んだ。
この子供に期待はしていなかったものの、やはり初めてのひ孫で、生まれたらひいおじいさまと呼んでもらえると思っていた。
しかし高橋仙は子供に木村の姓を付けることを拒否し、後には彼もこの子供への期待を失っていた。
木村家の子供ではないのなら、もう重要視する必要もないと思っていたが、こんなに早く失うとは思ってもみなかった。
考えることと実際に子孫を失うことは別物で、木村爺さんの気持ちは一時的に落ち込んでしまった。
「どうしてこうなった?」
高橋仙はこの子供を自分の命より大切にしていたはずだ。以前、出生前診断で問題が見つかっても中絶する気はなかったのに、どうして突然いなくなってしまったのか?
ボディーガードが話そうとした時、山本正博が入ってきた。
木村爺さんは気を取り直して近寄った。「正博か、帰ってきたのか?」
山本正博がもう二度とここには戻ってこないと思っていたのに、まさか彼がこの部屋に足を踏み入れるとは。
木村爺さんはあの不愉快な出来事には触れず、要点を話した。「お前の兄が誰かに美人局をかけられて留置所に入れられた。これは我が木村家の名誉に関わる。相手が金を要求するなら払えばいい。だが警察の方は、お前から一言言ってもらう必要がある。確か局長と知り合いだろう。お前が一言いい言葉を言えば、保釈できるはずだ。」
「あれはお前の兄だ。骨肉の情というものがある。彼に何かあれば、お前にとってもよくない。」
山本正博はそこに立ち、冷静に彼を見つめていた。
木村爺さんは眉間にしわを寄せ、続けた。「お前が私に怒っているのは分かっている...」