第377章 財名双方の誘惑

「そうかもね」池村琴子は口を尖らせ、心の中で冷ややかに笑った。

彼女は彼が他人と一緒に風呂に入ったことを責めていないのに、山本正博は逆に彼女を責めているのか?

山本正博が振り返りもせずに木村家の車に乗り込むのを見て、池村琴子は歯を食いしばり、キャンピングカーの方へ歩き出した。

車のドアの前まで来て、思わず振り返った。

山本正博は彼女の視線を感じたかのように、彼女の方を見た。

目が合うと、山本正博は目をそらした。

池村琴子は冷笑し、車に足を掛けると、高橋謙一が慌てて彼女を支え、お腹の赤ちゃんを心配した。

無侵襲DNA検査の結果がまだ出ていないこと、お腹の子の生死が未定であることを思うと、池村琴子の目が熱くなった。

コンテストの敗北に加え、山本正博のこのような態度、どんなに強い心も今は穴が開いたようだった。