高木阿波子は安堵しながらも、後から恐ろしくなった。
池村琴子は彼女に、価値観が合わない人とは一緒に仕事をするのが難しいと言い、彼女の品性は高木朝子とは違うから、彼女を高木朝子と同類に見なすことはないと告げた。
高木朝子の死亡のニュースが伝わった時、彼女はすぐに池村琴子のことを思い出したが、後で考えると、彼女は元々「W」のボスだったのだから、もし早めに手を下すつもりなら刑務所で動く必要はなかった。高木朝子を死なせたのは、別の誰かか、あるいは事故に違いない。
そのとき、ノックの音が聞こえ、眼鏡をかけた痩せ型の男が入ってきた。
もし高橋姉帰がここにいたら、一目で分かっただろう。これが彼女と反りが合わなかったクラスメートだと。
「五郎」
慕南は顔に何の隠しもなかったが、彼が入ってくるなり、池村琴子は即座に彼の名前を呼んだ。
慕南は驚いて目を見開き、彼女を見つめた。「あなたは...ボスですか?」
池村琴子は笑いながら頷いた。
慕南は口を少し開け、驚きに驚きを重ね、そして笑い出した。「なんだ、私たちのボスは女性だったんですね」
彼はボスのもう一つの身分が高橋仙かもしれないと推測していたが、実際に接してみると驚きの連続だった。
組織の中で厳格な指導力を持つYが女性だとは思いもよらなかった。
驚きと共に敬服の念も湧いてきた。
若くして「W」の管理職になり、女性でありながら、あらゆる面で男性に引けを取らない。
「五郎が私に、高橋姉帰がさっき隣にいたって言ってたわ」高木阿波子は先ほど聞いた噂を池村琴子に話した。「彼女は'W'の人間だって言ってたわ」
「もう'W'を自慢の種にしているんですね」高橋姉帰について話すと、慕南は軽蔑の表情を浮かべた。「まだ入社もしていないのにこんなに目立とうとして、入社したら、もっとひどいことをしでかすでしょう」
「ボス、本当に彼女を'W'の清掃員にするんですか?」
「W」の清掃員は他の清掃員のように大変ではなく、むしろ快適な仕事だった。
「W」の社員は皆マナーがよく清潔で、ほとんどが外で仕事をしているため、会社に集まることは少なく、いわゆる会社の清掃員は、高給を得て最も快適な仕事をしているのだった。