高木阿波子は安堵しながらも、後から恐ろしくなった。
池村琴子は彼女に、価値観が合わない人とは一緒に仕事をするのが難しいと言い、彼女の品性は高木朝子とは違うから、彼女を高木朝子と同類に見なすことはないと告げた。
高木朝子の死亡のニュースが伝わった時、彼女はすぐに池村琴子のことを思い出したが、後で考えると、彼女は元々「W」のボスだったのだから、もし早めに手を下すつもりなら刑務所で動く必要はなかった。高木朝子を死なせたのは、別の誰かか、あるいは事故に違いない。
そのとき、ノックの音が聞こえ、眼鏡をかけた痩せ型の男が入ってきた。
もし高橋姉帰がここにいたら、一目で分かっただろう。これが彼女と反りが合わなかったクラスメートだと。
「五郎」
慕南は顔に何の隠しもなかったが、彼が入ってくるなり、池村琴子は即座に彼の名前を呼んだ。