渡辺義広は彼女と一緒に起業したいと言っていたし、今は資金もあるので、ゼロからやり直すのも悪くないと思った。
二兄が手伝いたくないなら、彼の助けは必要ない。
この時、高橋姉帰は高橋敬一への不満でいっぱいで、渡辺義広が必死に目配せしているのに気付かなかった。
高橋グループと協力できるのに、あえて一から始めるなんて、この高橋姉帰は馬鹿なのか?
高橋敬一が話す前に、渡辺義広は高橋姉帰を抱き寄せて軽く笑いながら言った:「その考えは悪くないと思う。」
「姉帰はさっき怒っていただけです。気にしないでください。高橋グループとの協力は、私たち渡辺家族にとって光栄です。」
彼はそう言いながら、高橋姉帰の肩を握った。
高橋姉帰は一瞬戸惑い、その言葉を聞いて、渡辺義広が高橋家と協力するつもりだと漠然と理解した。
しかし、さっき言ってしまった言葉は覆水盆に返らず、今さら好意的な言葉を言えなくなっていた。
「高橋坊ちゃんは、私たちとどのように協力したいとお考えですか?私たち渡辺家族は、あなた方には遠く及びませんが、会社にもある程度の実力はあり、足手まといにはならないと思います。私は高橋グループと一緒にこの特許を大きく発展させて…」
高橋敬一は手を軽く振って:「そんな面倒なことはいりません。我が高橋家があなたたちの会社を買収します。」
「……」
買収も協力の一種だが、これは一回限りの協力だ。
渡辺義広は、目の前の人が言う協力が、彼らの会社の買収だとは思わなかった。
「調べましたが、あなたたちの会社はもう終わりに近づいています。遅くとも来月には破産申請せざるを得なくなる。今のあなたたちには買収という道しか残されていません。」高橋敬一は目を沈ませて言った。「考える時間を二日あげます。」
二日……
協力ではなく、買収!
渡辺義広は歯を食いしばり、顔色が少し青ざめた。
高橋敬一が言った時、彼は驚きと喜びを感じたが、本質的には、高橋姉帰のこの二兄も彼を見下していたのだ。
いわゆる買収とは、施しと軽蔑ではないか?
「ありがとうございます。」渡辺義広の穏やかな顔に亀裂が入った。「まだ行き詰まってはいません。私たちは買収されたくありません。」
「それなら仕方ありませんね。あなたたちの会社の状況について、私にはどうすることもできません。」高橋敬一は動じなかった。