東京都心のある茶屋で、古風な雰囲気が漂い、お茶の香りが立ち込めていた。
南條夜は最も眺めの良い個室に座り、チャイナドレス姿のウェイトレスがお茶を置いた。
木村誠治は暖簾をくぐり、白いダウンジャケットを脱ぎ、テーブルの向かい側にきちんと座った。
周りを見回して、木村誠治は興味深そうに笑った。「この茶屋は全国的に有名だと聞いています。値段は高いものの、評価は常に高いままですね。南條家がこのような事業を持っているのが羨ましいです。」
「羨ましがることはありません。」南條夜は無表情で急須を持ち上げ、自分の羊脂玉の杯にお茶を注いだ。「南條家がどんなに良くても木村家には及びません。あなたの家は一手で私たちの会社を潰せる存在なのですから。」
木村誠治は気まずそうに笑った。「そんな大げさな...私たちがいつあなたの会社を潰したことが...」
南條夜は笑みを浮かべたまま黙って、一枚の書類を取り出して彼の前に投げた。「最近、我が社は攻撃を受けています。これが私が調べた資料で、すべてあなたの木村家に関係しています。」
「木村坊ちゃんが突然電話をかけてきて助けると言いました。私は信じています。確かにあなたは私を助けられる...」南條夜は優しく笑い、唇の端には嘲りが浮かんでいた。「なぜなら、これはあなたがやったことだからです。他の人は助けられないかもしれませんが、あなたなら必ずできるはずです。」
...
茶屋の扉が開き、ウェイトレスの案内で、高橋謙一は片手で清水彩香を抱きながら池村琴子と一緒に別の個室へと向かった。
「お義姉さん」池村琴子はバッグからプレゼントを取り出し、清水彩香に渡した。「これは新婚のお祝いです。」
清水彩香はその呼び方に顔を赤らめた。
「彩香でいいわ。」
池村琴子と高橋謙一の関係を知っている清水彩香は、池村琴子にも優しく接した。
「病院で初めてお会いした時から、あなたが私の義姉になると分かっていました。」池村琴子は眉を上げ、からかうように言った。
高橋謙一が車にはねられた後、清水彩香は一見高橋謙一と戯れているように見えたが、実際には彼の気持ちを和らげようとしていたのだ。
清水彩香のその独特なやり方は他人とは違っていたが、むしろその違いが高橋謙一の心を捉えることができたのだ。