「政略結婚?」小林壮は変な顔をして眉を上げた。「うちはまだそんなに貧乏じゃないから、お前に政略結婚させる必要はない。それに、今の渡辺義広には婚約者がいるし、うちの方が条件がいい。どんなに貧乏になっても、お前を下に嫁がせたりはしない」
小林悦子は眉をひそめた。
下に嫁がせないということは、つまり、必ず自分の家よりもお金持ちの相手を見つけるということだ。
なぜか、小林悦子は突然ある人のことを思い出した。
その人は金縁の眼鏡をかけ、優雅な笑顔を浮かべ、親しみやすそうに見えたが、高山の雪蓮のように近づきがたい存在だった。
彼女は自分がSNSに投稿するたびに、彼が「いいね」をつけ、時々体調を気遣ってくれることを思い出した。
高橋忠一の身分を考えると、彼女はため息をついた。
今は家の暮らし向きがよくなったとはいえ、まだ彼には釣り合わないだろう。