第512章 浮気現場を目撃

残念ながら、高橋姉帰の一途な愛は犬に餌をやるようなものだった。

池村琴子は軽く笑い、素早く携帯を取り出してこの瞬間を撮影し、写真を保存した。

「高橋姉帰に送るの?」山本正博は余裕そうに、深い瞳で渡辺義広を見つめた。

渡辺家族にはこの一本の独り息子しかいない。当時、渡辺義広が高橋姉帰を追いかけたのは少し突然だったが、今となっては、早くから兆しがあったようだ。

「送らないわ」池村琴子は唇を曲げて、「私が送ったら、きっと写真を加工したとか、彼女と婚約者の関係を引き裂こうとしていると言うでしょうね」

池村琴子は分かっていた。高橋姉帰は今回本気だということを。彼女は本当に渡辺義広に夢中になっていた。

彼女は渡辺義広が自分を愛していないという事実を受け入れられないだろう。

「山本グループは光町市役所のAクラスプロジェクトに興味ある?」池村琴子は尋ねた。