第529章 助けない

渡辺義広の病室の外には、記者たちが群がっていた。

池村琴子に手を出す勇気のある人間は、そう多くはないのだから。

"W"との関係はさておき、高橋仙という身分だけでも、公衆の面前で彼女の命を狙おうとする者はほとんどいないはずだ。

しかし渡辺義広はそれをやってのけた。それも堂々と。

押し寄せる記者たちを見て、渡辺義広の顔色が青ざめた。

やっとあの厄介者たちを追い払ったと思ったら、今度はこいつらか。

記者たちは渡辺義広の顔が腫れ上がっているのを見て驚いた。よく見ると、義広は手が動かせないだけでなく、足もほとんど使い物にならないほど殴られており、顔に至っては元の面影もない状態だった。

「ハハハ、義広さん、まるで豚の顔みたいですね」

「豚どころか、パレットみたいだよ」

記者たちは思わず笑い出した。