「黒バラ?」
池村琴子は眉を上げ、その噂の人物のことを思い出した。
高木財源が今の地位まで上り詰めたのは、黒バラと呼ばれる軍師がいたからだという噂があった。
しかし、この黒バラは誰もが無意識に男性だと思っていたが、まさか女性だったとは。
「確認は取れたのか?」池村琴子は近籐正明を鋭い目で見つめた。「高木阿波子が黒バラだと確実なのか?」
「はい」近籐正明は溜息をつきながら答えた。「組織の調査が間違ったことなんてありませんよ」
「W」が調べられないものはあっても、「W」が調べられたものが間違っているということはない。
「高木阿波子が入ってきた時、私が調べようとしたのに、あなたが必要ないと言ったでしょう。こうなってしまいました。彼女は裏切ったんです」近籐正明は心配そうな表情を浮かべた。