「ふふ、残念ながら私の兄たちは彼女のそういうところに弱いのよ。善良で身内を庇うなんて、私から見れば聖母そのものだわ」そう言いながら、高橋姉帰は高木阿波子を何度も見つめた。
池村琴子が聖母でなければ、高木阿波子と関わることもなかっただろう。
しかし、その聖母のような性格こそが、高木阿波子につけ込まれる隙を与えたのだ。
「高木さんが私たちの味方なら、隠し事はもうやめましょう。高木社長、私から全ての情報をお渡ししました。いつから高橋家に対抗しますか?」
……
高橋敬一はビルに入り、真っ直ぐ前を見つめた。
その時、受付の女性が近づいてきて、怪訝そうに尋ねた。「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
見覚えのある人物だったが、受付の女性にはすぐには思い出せなかった。
「高木財源と商談の約束があります」