017 田中社長という人物

しばらくすると、オフィスのブザーが鳴り、唐沢行が応答すると齋藤秘書の声が聞こえてきた。「社長、お客様がお見えになりました。」

齋藤秘書の報告を聞いて、福田隼人は不安を感じた。セイソウリキグループの社長である唐沢行が、自分に会う機会を与えてくれるかどうか、確信が持てなかったのだ。

会話が終わるとすぐに、唐沢行がオフィスから出てきた。「福田さん?お噂はかねがね伺っておりました。若手の中でも有能な方だと聞いています。こちらへどうぞ。」

福田隼人は、唐沢行がこれほど若いとは思わなかった。自分とほとんど年が変わらないように見えた。

以前から唐沢行に会うには順番待ちが必要だと聞いていた。外で待っている人々もその噂を裏付けていたが、福田隼人は唐沢行が秘書に自分を呼び入れるよう指示するとは思ってもみなかった。