017 田中社長という人物

しばらくすると、オフィスのブザーが鳴り、唐沢行が応答すると齋藤秘書の声が聞こえてきた。「社長、お客様がお見えになりました。」

齋藤秘書の報告を聞いて、福田隼人は不安を感じた。セイソウリキグループの社長である唐沢行が、自分に会う機会を与えてくれるかどうか、確信が持てなかったのだ。

会話が終わるとすぐに、唐沢行がオフィスから出てきた。「福田さん?お噂はかねがね伺っておりました。若手の中でも有能な方だと聞いています。こちらへどうぞ。」

福田隼人は、唐沢行がこれほど若いとは思わなかった。自分とほとんど年が変わらないように見えた。

以前から唐沢行に会うには順番待ちが必要だと聞いていた。外で待っている人々もその噂を裏付けていたが、福田隼人は唐沢行が秘書に自分を呼び入れるよう指示するとは思ってもみなかった。

唐沢行は椅子に座り、目の前の男性を上から下まで観察し、その視線には強い審査の意味が込められていた。

福田隼人の柔和な表情は、その視線に戸惑いを見せていた。

唐沢行の視線はますます大胆になり、頭からつま先まで福田隼人を見渡した後、やっと座るように促した。

調査によると、福田隼人は取締役との関係が深く、取締役がこれほどまでに彼のために道を開こうとするのも納得できる...そう考えると唐沢行は危険そうに目を細め、意味ありげな笑みを浮かべながら福田隼人を見つめた。

唐沢行は容姿が端麗で、長年スキャンダルもなく結婚の噂も聞かないと言われている。そう考えると福田隼人は眉をしかめた。まさか男性が好みなのだろうか?

福田隼人は体の横で拳を握りしめ、視線を返した。すると唐沢行はようやく口を開いた。「はじめまして、福田さん。セイソウリキグループ社長の唐沢行です。」

「唐沢社長、今回お伺いしたのは、セイソウリキの新規入札プロジェクトについてお話させていただきたいと思いまして。私ども福田家の建設業は始まったばかりですが、私が全体を担当しており、これまで取引のあった会社からも良い評価をいただいております。」

福田隼人は資料を差し出しながら続けた。「こちらは私どもの会社の関連資料と紹介文書をまとめたものです...」