021 社長の座

福田桐子はそこに立ち、助けを求める目で福田鐵と福田章を見つめたが、二人は不自然に顔をそむけた。この時、誰もが分かっていた。福田桐子一人のために福田のお婆様の寵愛を失うわけにはいかないし、この時期に福田隼人の機嫌を損ねるわけにもいかないということを。

「私は...」周りの冷たい視線を感じ、福田桐子は言葉を濁しながら、雲原静に目を向けた。

雲原お姉さんはあんなに優しいから、きっと助けてくれるはず。雲原お姉さんが一言言えば、福田隼人もあの女の味方をするのを止めるはずだ。

福田桐子は最後の望みを雲原静に託したが、雲原静は静かにお茶を飲み続け、彼女の窮地を全く気にかけていなかった。

「桐子さん、もう決めましたか？土下座して謝罪するか、それとも早死にの賭けをお婆様に実現させるか？」加藤恋の一言一言が福田桐子の耳に魔音のように響いた。