062 一緒に向かう

加藤恋は福田章の説明を聞いて、それが橋本様のプライベートレストランだと確信した。本当に偶然すぎる。

福田桐子は得意げに加藤恋を一瞥してから、秋山心に向かって言った。「心、知らないでしょうけど、湖山霧隠れを予約するために、従兄がどれだけ尽力したか。あそこは普通の人では予約できないのよ」

福田章はさらに満面の笑みを浮かべ、福田桐子の言葉に続けた。「正直に言うと、湖山霧隠れは一日の接客数が限られているんです。心のためでなければ、こんなに一生懸命準備しなかったでしょう」

そう言ってはいるものの、これは秋山心に良い印象を与えるための誇張に過ぎなかった。

湖山霧隠れの予約ができたのは、福田のお婆様が直接出向いて、古い友人に頼み、多額の金を使って何とかしたからだった。

「みんな友達なんだから、家族的な食事会で十分じゃないかしら」東京の高橋家の私房菜の評判を聞いていた秋山心は、贅沢すぎることを心配して急いで口を開いた。

福田章は必死に首を振った。「そんなことないです！あなたは福田家の貴賓なんです。友達なんて言葉で片付けられませんよ」

そう言って、福田章は加藤恋を一瞥した。「おい！役立たず、福田隼人からいくらもらった？椅子一脚分も予約できないんじゃないの？」

加藤恋は福田章を冷ややかに見て言った。「私も湖山霧隠れを予約しましたよ」

福田桐子と福田章は顔を見合わせ、大声で笑い出した。雲原静までもが首を振り、諭すような口調で言った。「加藤さん、心に良い印象を与えたいのはわかるけど、嘘をつく必要はないでしょう。橋本家の私厨がどれだけ予約困難か、私たちは知っています。あなたのような身分では、そんな場所に行ったこともないでしょう。こんな大言壮語して、実現できなかったら福田隼人の顔に泥を塗ることになりますよ」

「雲原さんは何の立場で私に説教してるんですか？」加藤恋は冷静に横目で見て、「私が嘘をつこうが、あなたには関係ないでしょう？私は秋山さんを食事に招待しているだけで、あなたを誘った覚えはありませんから、余計な心配は無用です」

「加藤さん、雲原お姉さんにどういう口の利き方してるの？」福田桐子の声が突然高くなった。「見てよ、その貧相な様子！ふん！湖山霧隠れの門番の犬にだってなれないくせに」