156 公募選考開始

赤ちゃんたち、さようなら!

加藤恋は不思議な感覚を覚えた。きっとまた会えるはずだと。なぜそう思うのかはわからないが、それでも心の慰めにはなった。

木村信彦が二、三歩歩いたところで、突然振り返った。加藤恋は反射的に一歩後ずさりし、警備員が通った方向を見た。ここには大勢の人がいる。この男も軽々しく手出しはできないはずだ。

加藤恋に何も言わず、子供たちを抱き上げた木村信彦は、加藤恋を深く見つめた後、すぐに背を向けて足早に立ち去った。

この男は本当に奇妙だった。何をしているのか、最後のあの眼差しは一体何だったのか。加藤恋は背筋が凍る思いだった。

「恋?なぜここにいるんだ?」突然背後から声がして、彼女は驚いて飛び上がりそうになった。

須田宏は青ざめた顔で急いで加藤恋の前に来た。「今日はなぜ帰らなかったんだ!お前のやったことで家がどれだけ大変なことになっているか分かっているのか。お前は本当にひどすぎる!」

加藤恋は顔を真っ白にして、須田宏の言葉の意味が全く理解できず、ただ機械的に頷くだけだった。

「お前の母さんが人にいじめられて、頭を怪我したのに、お前は心配する様子もない。はっ!私から言わせれば、お前は自分のことしか考えていない。私たち家族のことなんて眼中にないんだろう。福田隼人のやつも電話に出ない。一体何を忙しがっているんだ!」

須田宏が腕を上げて指差した方向は福田嘉の方だったが、加藤恋は緊張して相手を横に引っ張り、焦った様子で言った。「お父さん!今夜一体何があったの?早く話して。」

そう言いながらも、加藤恋は全く興味がなく、須田宏の話は耳に入らず、目は脇の小さな扉に向けられていた。東と西のために、この件は絶対に隠さなければならない。

「...とにかく、奴らは私たちの家族を馬鹿にしている。お前と福田隼人が今日いなかったおかげで、奴らの思う壺だ!考えただけで腹が立つ。恋、早くモデルの仕事に戻って、もっと稼ぐんだ。あの見下してくる連中に、私たちの家こそが家業を継ぐのに最もふさわしいことを見せつけてやるんだ!」須田宏は厚かましくも全てを加藤恋のせいにした。

「私の言っていることが分かったか?」

加藤恋は答えず、適当に二言三言応じただけで、張本の叔父さんに会いに行こうとした。