179 一緒に出発

福田嘉と須田宏の顔には緊張の色が浮かんでいた。かつて福田家が難しい立場に置かれた時、彼らは親として加藤恋を一言も助けることなく、むしろすべての責任を加藤恋に押し付けていたのだ。

彼女は役立たずで、福田家の助けにもならないと罵り、とにかく加藤恋を福田隼人から引き離すためにありとあらゆる言葉を投げかけた。さらに先ほどのパーティーの場でも、彼らは加藤恋を助けようとしなかった……

しかし今、すべての事態は彼らの想像を完全に超えていた。加藤恋がどうして戦闘部の人々と知り合いなのか?

遊川顕の出現は福田隼人の面子を保ったが、加藤恋が知っているのは戦闘部だ。軍部が彼らの家族を後ろ盾にしてくれれば、これからの心配は何もないのではないか?

しかし考えてみれば、加藤恋は最近少し様子が違っていた。この身分の違いはあまりにも大きすぎる。もし彼女が本当に一気にスターになり、占い師からの招待もあれば、彼らの家族の福田家での地位は一気に上がるはずだ!

福田鐵?ふん!奴らなんて何者でもない!

「ねえ、恋や!私たちにちゃんと話してくれないと。あなた一体何者なの?最近のあなたの芸能界での活躍は順調すぎるんじゃない?」

「もしかして戦闘部に親戚でもいるの?」

福田嘉と須田宏は慌てて加藤恋に事情を尋ねた。特に福田嘉は彼女に体を寄せるようにして、「私たち家族はこれからあなたに頼るしかないわ。出世は目前よ!」

加藤恋は多くを語らず、考えることもなかった。今は疲れた体を休ませることしか考えていなかった。この数日間はピアノの練習方法を考えなければならない。

しかし福田嘉は直接加藤恋の前に立ちはだかり、今日話さなければ通さないという態度を見せた。

「お母さん、お父さん、誤解されているようですが、私は昨日テロリストに誘拐されただけです。彼らは心配してくれていて、私も一応公人なので、事を大きくしたくないし、私を誘拐した人がまた現れるかもしれないので、そばで見守っているだけなんです。」

言葉が落ちると、福田嘉は軽く目を瞬かせ、その後信じられないという様子で口を開いた。「何?つまりあなたは彼らとそれほど親しくないの?彼らはただ以前あなたが人質になったことがあるから、保護すると言っただけなの?」