「カット!この部分は一旦撮影中止!」オーディション番組のディレクターが急いで叫び、皆に助けに行くよう指示した。
葉野言葉がパフォーマンス中に事故を起こし、その場にいた人々が動揺した。他の出場者たちは葉野言葉の様子を見て、その不注意を笑わずにはいられなかった。加藤恋は前に進み出て葉野言葉を支え、足を抜き出そうと試みた。
ディレクターはこの状況を見て、急いでスタッフに道具を持ってくるよう指示し、番組に常駐している医師を呼んだ。このとき、皆が須田山ディレクターの先見の明を褒めずにはいられなかった。ここに医師を配置しておくことを考えていたのだから。
その場にいた他の出場者たちはステージ上のこの状況を見ても、葉野言葉を助けようとする者は誰もいなかった。加藤恋だけが葉野言葉の側で支えていた。その行動を見て、ようやく数人が手伝いに行った。夏川晴海は加藤恋の振る舞いを見て、内心不快になった。どこに行っても、この加藤恋は善良さをアピールするような演技をするのだ。
その様子を見て、夏川晴海は明らかに軽蔑の態度を示した。こんなことで人の好感を得ようとするなんて、大衆の目を甘く見すぎている。このような行為は笑い者になるだけだ!
「ま、また助けてもらって...」葉野言葉は小声で言った。足が挟まるのは元々恥ずかしいことなのに、挟まっていた数分間、皆は彼女を笑うばかりで、誰も助けようとしなかった。皆がとても冷たく感じられた。
加藤恋の助けに、彼女は心から感動した。突発事故で試合は一時中断せざるを得なくなり、スタッフが現場に集まって、二つの鉄材を分離し、ようやく葉野言葉は足を抜くことができた。
「大丈夫?」葉野言葉が救出されるのを見て、加藤恋の心もようやく落ち着いた。足首に血痕が一周できているのを見て、加藤恋は心配になった。
葉野言葉は顔を上げた。顔色は少し青ざめていたが、笑みを浮かべていた。「大丈夫です。ちょっと痛いだけで、休めばよくなります。」
皆が無事なのを確認し、撮影が再開された。司会者が登場し、まず皆に謝罪した。
「本日の事故は主催者側の責任です。必ず皆様に説明させていただきます。第一ラウンドの結果は出ていますので、残りの出場者は次の公開戦の準備をお願いします。」