288 別荘の区分

3日間かけて、温井詩花はようやく曲全体を完璧に歌えるようになった。彼女の目の輝きはほとんど消えかけていた。温井詩花は加藤恋がこんなにも笑顔の裏に厳しさを隠す人だとは思わなかった。表面上は優しく穏やかに見えるのに、指導するときはこんなにも容赦ないなんて。

「ゲームに戻らせて...早く...」温井詩花は隣の加藤恋を見つめ、しばらく考えてから口を開いた。「でも、本当にライブ作曲パフォーマンスをすることに決めたの?番組側が出すテーマは絶対に簡単なものじゃないはずよ。野木早香に見せしめをするためとはいえ、そこまでする必要は...」

「大丈夫よ、きっと何とかできるわ。私の曲は簡単にパクれるものじゃないってことを、彼女に分からせないと」玄関まで来て、加藤恋は突然思い出したように言った。「そういえば、この数日葉野言葉を見かけてないわね。彼女も予選通過したはずなのに」