「お金を持っているのは違いますね。他の人みたいな虚名だけじゃないでしょう、加藤恋さん、そうじゃないですか?」
「指原さん、飲みすぎですよ!」赤髪の男性が笑いながら場を和ませようと、酒杯を上げて仲間たちと乾杯を呼びかけた。
加藤恋は先ほど発言した人を冷ややかな目で見つめた。彼女は彼らが大学の同級生だったことを覚えていた。指原霞は彼らの学科の人間ではなく、小林雪と一緒に学生会で働いていただけだった。そして先ほど話した男性は崎本邦夫という名前だった。
「私たちは正直でいましょう。私のこの程度の成功なんて、取るに足りないものです」と小林雪は照れくさそうに言い、すぐに加藤恋の方を感謝の眼差しで見つめた。
クズに出会って、彼女はすべてを失いかけた。加藤恋がいなければ、今頃は死んでいたかもしれない。