440 白井景、襲撃される

「さっきの人は嘘をついていた」ずっとベッドに横たわっていた川島芹那が突然口を開いた。「あなたたちが何を話していたのかは分からないけど、もし長い時間前のことなら、彼の記憶は詳しすぎる。まるで暗記して詳しく復唱しているみたいだった」

川島芹那の指摘で、加藤恋はさっき何か違和感を覚えていたことを思い出した。どうやらこの病院にはまだ調査すべきことが多くありそうだ。

「川島さん、ご安心ください。必ずまた来ます。あなたの火傷を完全に治せるとは約束できませんが、全力を尽くして試してみたいと思います」

加藤恋の確信に満ちた口調に、川島芹那の心に一筋の希望が芽生えた。加藤恋との出会いがどんな縁なのか分からなかったが、彼女に出会ったことで自分の人生が大きく変わるような予感がした。

部屋を出た加藤恋は、さっき見間違えたとは思えず、急いで階下へ走っていった。似た背中を見つけて速度を上げたが、思いがけず男性と衝突してしまった。

「いたっ...」力の作用は相互的で、加藤恋と男性は衝突して、そのまま床に倒れてしまった。

「加藤恋?」相手がかつらと帽子、眼鏡をしていたが、加藤恋は一瞬で分かった。

「白井先生?どうしてここに?」白井景は立ち上がり、加藤恋を助け起そうとした。

「だめ!」赤いシャツとジーンズのスカートを着た女性が突然飛び出してきて、加藤恋を強く押しのけた。

「加藤恋!」

大きな音とともに、加藤恋は病院のガラスドアの前に転倒し、痛む肩を押さえながら目の前の光景を信じられない様子で見つめた。

「加藤恋、大丈夫か?」白井景は急いで加藤恋を助け起こした。彼女は社長の娘なのだ。もし何か起これば、高杉川のあいつは絶対に許してくれないだろう。

「...白井先生、これはどういうことですか?」加藤恋は反射的に周りを見回したが、あの背中はもう見えなくなっていた。

「何をするつもりだ?」白井景は加藤恋の質問に答えず、その狂った女性の方を見た。

女性は顔色を暗くし、白井景が加藤恋を支えている様子を見て体を震わせた。「だめ!景、あの女に触れちゃだめ!あなたは私のもの、他の女性と接触してはいけない、許さない!」