「それはわかりません。おばあちゃんが何か別のことを研究しているんでしょう」福田桐子は男性をあやすのが上手で、数言で井野忠を喜ばせ、急いで彼女を二階の部屋に連れて行こうとした。
リビングにいた福田鐵と福田元は完全に無視されたかのように、二人が抱き合いながら階段を上がっていく様子を見て、思わず気まずい表情を浮かべた。
そのとき、福田のお婆様は確かに深井須澄と一緒に戻ってきた。家の雰囲気の異変を感じたのか、咳払いをして「きりきりは今、良い縁に恵まれた。それは彼女の幸せなことだ。あなたたち二人は自分のすべきことをしなさい。会社にはまだたくさんの仕事が待っているでしょう?」
福田鐵は非常に気まずそうに頷いた。これが正しいことなのかどうか本当にわからなかったが、ただ「はい、母さん。わかりました。ただ心の中が少し気持ち悪いだけです」と言った。
福田のお婆様は呆れた表情で彼を見つめ、すぐに「何が気持ち悪いの?これのどこが?お金が入ればそれでいいじゃない!深井取締役と井野社長がきりきりにくれるお金は、あなたたちには稼げない額よ!」
「はい...母さんの言う通りです...」福田鐵はただ諦めて答えるしかなかった。
福田のお婆様は意味深く「きりきりと井野社長の関係が安定すればするほど、私たちの利益も大きくなる。そうなれば数千万どころか、欲しいものは何でも手に入る。そのお金は全部あなたのものよ。あの小娘に私たちの家を継がせるとでも思ったの?」
福田のお婆様のこの一言で、福田鐵の心はずっと楽になった。結局のところ、結果がどうであれ、お金が手に入れば彼にとっては良いことだった!
特に今は二人が知り合ったばかりなのに、この井野社長がこれだけのお金を出してくれた。きっと今後、彼が福田家に投資する額はもっと増えるはずだ!
そう考えると、福田鐵も頷いて、もう何も言わなくなった。
一家が福田家の将来の発展について話し合っているとき、突然二階から騒がしい音が聞こえてきた。叩く音とヒステリックな叫び声だった。
皆は顔を見合わせ、二階に様子を見に行きたかったが、これが彼らの何か新しい遊びかもしれないと思い、邪魔するのを躊躇った。