彼女は昨日初めて福田隼人を見た時から、この男性に一目惚れしてしまった。加藤恋の存在は知っていたものの、一度も会ったことはなかった。
目の前にいる人が、かつて福田隼人が強制的に娶った妻だと知り、木村桃は加藤恋に天真爛漫な表情で尋ねた。「芸能界は乱れているって聞きますけど、加藤さんの名前もよく話題に上がっていますよね。あの噂って本当なんですか?」
「潔白な者は自ずと潔白です」加藤恋は彼女がなぜそのような質問をするのか理解できなかった。おそらく年が若いため、多くのことを理解していないのだろう。
「それじゃ解決にならないよ。福田隼人の評判に関わる」石川直の口調には軽蔑の色が混じっていた。実は彼は福田隼人との付き合いを好まなかった。家族の力を借りているだけなのに何が偉いのかと思っていたが、最近福田隼人は福田家と決別しながらも自分の道を切り開いていた。だから今回、わざと木村桃に福田隼人との協力を持ちかけたのは、隙を見つけるためだった。