「もう10時だし、お客さんが来るなら、とっくに来てるはずよ。何もないなら、早く片付けて、シャンパンなんかも返せるものは返して、お金を無駄遣いしないようにしましょう」
福田元は興奮を隠しきれない様子で、福田隼人が恥をかくのを見るのが最高に楽しみだった。そう思いながら、誰も気づかないうちに生配信を始めた。
レッドカーペットの先には誰もおらず、福田隼人は少し失望を感じた。もう全てが決まってしまい、誰も現れないようだった。
「加藤恋、さっきお客さんが一人も来なくても大丈夫って言ってたよね?あなたがいれば十分だって。どんな手段があるのか見てみたいものだね。まさかあの数人のファンを当てにしてるわけじゃないでしょう?ハハハハ!自分の立場もわきまえないなんて、本当にダメな奴だ!」福田元は意地悪く言った。
そのとき、遠くからクラクションの音が聞こえ、案内人が大声で告げた。「橋本様がお見えになりました!」
来客には肩書きがなかったが、その場にいた人々を思わず緊張させた。
橋本森彦?
加藤恋は驚いた。最初に来たのが彼だとは思わなかった!
福田家の全員が目を丸くして、橋本様が車から降りてくるのを見つめていた。この人は誰だ!
東京の実力者で、東京の闇社会全てを取り仕切る存在だ。その力は侮れない。なぜここに来たのだろう?
橋本様は車から降りると、すぐに加藤恋の方へ直進してきた。
福田家の人々は一瞬驚きを隠せず、福田のお婆様は信じられない様子で福田鐵と視線を交わした。福田鐵は少し考えてから口を開いた。「思い出しました。私は最近、闇金融の大物と知り合いになったんです。その人も橋本様の配下だと聞いています。おそらく彼が今日のことを橋本様に話して、私の面子で来てくださったんでしょう」
そう言いながら、福田鐵は急いで服装を整え、前に歩み出た。
福田のお婆様は息子の言葉を聞いて、急に生き生きとし、服装を整えて歓迎しようとした。
橋本様は急いでメガネを直し、とても興奮した様子で加藤恋の側まで来ると、近づいてきた福田鐵には全く目もくれず、非常に恭しく言った。「お嬢...咳、加藤さん!福田さん、間に合ってよかったです」
周りの人々の探るような視線の中、加藤恋は頷いて直接言った。「来てくれたのね」