605 園長、現る

「三人とも何をぼんやりしているんだ？早く一緒に行け！彼らを追い出せ！」ハゲ課長は怒りで飛び跳ねていた。このまま上層部に知られたら、自分の立場も危うくなる。責任を追及されれば、解雇されるかもしれない。

残りの警備員たちは歯を食いしばって一斉に突っ込んでいったが、加藤恋どころかつよしくんの防衛線さえ突破できなかった。

あっという間に、数人全員が吹き飛ばされた。

加藤恋はつよしくんが最後の一人を片付けるのを見て、すぐにハゲ課長に向き直り、警告するような口調で言った。「今なら謝る気になりました？」

「この野蛮な下賤な女め！一体何がしたいんだ。ここがどこだか分かってるのか。公然と暴力を振るうなんて、本当に死にたいらしいな」

加藤恋は彼を見つめて言った。「言葉の暴力を振るったのはあなたたちでしょう？」

「お前らが自業自得だ！底辺のクズのくせに、何の権利があってここに入って来る」ハゲ課長は不満げに叫んだ。

そのとき、見物人たちが道を開け、群衆の中から見覚えのある顔が現れた。その表情には怒りが浮かんでいた。

加藤恋はその顔に見覚えがあると感じたが、誰なのか思い出せなかった。

「あれは木野奥様じゃないか？今日はどうして直接園に来られたんだろう？」

「珍しいわね！まさか今日、木野奥様が突然現れるなんて。お孫さんを送りに来たのかしら？」

「これは大変だわ。木野奥様は血統と身分を最も重視して、芸能界の文化が大嫌いなのよ。あの方は目に一粒の砂も入れない人だから、加藤恋はもう終わりね！」

皆、加藤恋がきっと追い出されるだろうと思い、そうなればメディアがまた新しいニュースを作るに違いないと考えていた。

そう考えると、皆は思わず加藤恋の方を見た。誰もが面白がって見物しようという態度だった。

木野奥様はゆっくりとハゲ課長の方へ歩み寄り、非常に不機嫌な表情で言った。「これは一体何をしているんです？こんな騒ぎを起こして、ウィンザーの面目を潰すつもりですか！」

木野奥様を見たハゲ課長は救世主でも見たかのように、急いで前に出て、へいこらしながら挨拶した。「園長、申し訳ございません。本当に申し訳ありません。全て私の不手際です。まさか一人の三流タレントが二人の私生児を連れて入って来るなんて。ご安心ください、今すぐ彼女たちを追い出させます。我が幼稚園の恥にはさせません」