井野忠はすぐに興奮を抑えきれず、思わず口走った。「その人は誰なんですか?どこにいるんですか?早く教えてください!」
主治医は井野忠に揺さぶられてめまいがしそうになり、急いで体を安定させて口を開いた。「紹介することはできますが、ただし紹介料が……」
深井須澄は急いで小切手を取り出し、5万円と書いて主治医に渡しながら言った。「もしあなたが紹介してくれた人が本当に私を治せるなら、さらに15万円差し上げます!」
小切手を受け取った主治医は咳払いをして、やっと話し始めた。「東京に今、神醫がいらっしゃいます。先日、植物状態の患者を治療されて、奇跡と呼ばれています!その神醫は今、東京で診療所を開いています。もしお願いしに行けば、まだ希望があるかもしれません!」
この言葉を聞いて、深井須澄は突然喜びに満ちた表情を浮かべた。「その神醫というのは、小瀧武という方ではありませんか?」
「ご存知なのですか?」主治医は尋ねた。
深井須澄は大喜びで笑いながら言った。「知っているどころではありません!その神醫は私たち深沢家の代々の友人なんです!当時小瀧家が困っていた時、私たちの家が援助の手を差し伸べたからこそ、今の地位を得られたのです。まさか今、東京に来ているとは!これは素晴らしい!」
ここまで話すと、井野忠はもう待ちきれず、病床から飛び降りて深井須澄に向かって言った。「お兄さん!早く私をその神醫のところへ連れて行ってください。私には希望があるんです!」
小瀧武の現在の住所を聞き出すと、一行は大勢で小瀧のところへ向かった。到着するや否や、井野忠は急いで中へ走っていった。
まだ入り口にも入らないうちに、若い男が目を押さえた別の若者を追い出しているのが見えた。
その若者は必死に懇願していた。「先生!お願いです、神醫に一言言ってください。私の目を治療してもらえないかと!治してくれるなら500万円、いや1000万円出します!」
若い男は首を振って冷たい声で言った。「石川さん、ここ数日毎日いらっしゃっていますが、もう私たちの通常営業の妨げになっています。小瀧医師は、このまま執着されるようでしたら警察に通報すると言っています。さらに、あなたは私たちの神醫の恩人を怒らせたのですから、いくらお金を出されても治療はお断りです。」