684 神薬の奪取

福田隼人はほとんど気を失いそうになり、この世にこんな男がまだいるのかと疑った。その顔には嫌悪感が隠しようもなく表れていた。

夜が訪れ、加藤恋が眠りにつこうとしたとき、スマホが振動し始めた。彼女は画面を見ると、なんと橋本様からのメッセージだった。

「お嬢様、おっしゃる通りです。小瀧医師が今夜東京漢方医院の近くに戻ったところ、すぐに不審な人物が現れました」

加藤恋は素早く返信した:「予想通りなら、彼らは小瀧先生の薬を奪おうとしているのでしょう。よく見ておいてください。何か起きたら教えてください。もし彼らがまだ動いていないなら急ぐ必要はありません。私が小瀧先生に渡した薬がすぐに役立つはずです」

加藤恋はホテルに戻るとすぐにキッチンを借り、似たような薬丸を素早く作り上げた。しかし、これを実際に服用した場合の効果は、本物とは雲泥の差があるものだった。

「くそっ、この犬どもめ。一日中他人の物を盗むことばかり考えている。お嬢様、ご安心を!あなたの命令一つで、すぐに仲間を連れて奴らを捕まえ、切り刻んで深海のサメの餌にしてやります」橋本様は以前高麗国で苦い経験をしたため、彼らのことを特に憎んでいた。

「必要ありません。あの人たちは手ごわいわ。リーダーの安藤真は韓豊製薬の御曹司よ。本当に争いになったら私たちも得をしないわ。後のことは私が手配済みよ。あなたは小瀧武と昭の安全を守ることだけに専念して。もし今夜彼らが動かなければ、明日の夜になるはずよ。その時は彼らに構わないで。薬を奪いたければ奪わせておいて、人に危害が及ばなければそれでいいの」

加藤恋が調合した薬は松本鶴から特別に教わった処方によるものだった。この丹藥は一見すると効果があるように見え、最初は確かに症状が改善するように見えるが、その後は普通のビタミン剤と変わらず、体にはほとんど益がない。それだけでなく、この薬を過剰に使用すると、他の薬と相互作用を起こす可能性があり、どんな合併症を引き起こすか誰にも予測できない。

加藤恋の理解によれば、この薬は体内の最後の気血と精力を使い果たすもので、一度これを使うと、最終的には油切れのランプのように消えていくだけだった。