第35章 外科の名手

えっと……

栗本放治は眉をひそめ、瞳は淡く、薄い光に包まれていた。「僕を見ていたことをどうして知っているの?もしかして、君も僕のことをずっと見ていたの?」

彼は久我月に見破られても驚かなかった。一橋貴明から、この少女が並の人物ではないことを聞いていたからだ。

先ほどの彼女の応急処置の手際は、とても専門的だった……そう考えると、栗本放治は目を細め、瞳の色が沈んだ。

「私は外界の感覚に敏感なんです」

久我月は首を少し傾げ、イヤホンのコードを整理しながら、黒い瞳で栗本放治を見つめた。「そんなに私のことを気にするより、自分のことを考えた方がいいんじゃないですか」

栗本放治の目が沈み、久我月の視線と合わさると、全身が氷に包まれたような感覚に襲われた。

こんな感覚を覚えさせる人は、めったにいなかった。