第76章 あなたは彼女を追いかけるの?

山中希美は中村楽の見覚えのある、でも何か違う顔を見て、顔色が真っ青になり、肩が不思議と震え始めた。

彼女の目は一瞬で赤くなり、鈴木静海を押しのけて、中村楽の手を掴んで興奮した様子で「楽姉、あなた...」

「この五年間、一体どこにいたの?どうして一通の手紙も私に残さなかったの?あの時、私はてっきり...」

山中希美は言葉を詰まらせ、後の言葉が出てこなかった。中村楽の整った顔立ちを見つめながら、泣きながら笑っていた。

喜びのあまりの涙だった。

五年前のカリフォルニア州で中村楽が亡くなったと思っていたのに。

今、中村楽に再会して、山中希美は自分がどれほど嬉しいか実感した。もし兄の山中翔が中村楽が生きていることを知ったら、きっと喜ぶだろう。

でも...中村楽はもう山中翔に会えない!