第70章 計算されてしまった

クラウンタワー社長室。

オフィスの内装は黒と白の二色のみで、鈴木静海の好みそのままのスタイルで、クールでシンプル、しかし眺望は特に開けていた。

中村楽が顔を上げると、その男を目にした。

巨大な窓の外には、京都の街並みの半分ほどが見え、そこに立つと、まるで天空が頭上にあるかのようだった。

まるで雲の上に居るかのように。

鈴木静海はガラス窓の前で体を半分横向きにして立ち、タバコを吸っていた。白い煙が漂う中、彼の眉目がガラス窓に映り、相変わらず深い立体的な顔立ちだった。

中村楽はハイヒールを履いて、カーペットの上を歩く時、意識的に足音を軽くしたが、鈴木静海にははっきりと聞こえていた。

鈴木静海はゆっくりと振り向いて彼女を見た。二人の間はわずか5メートルほどの距離。その漆黒の瞳は昔と変わらず深かった。