伊藤おばさんは二人分の夜食を書斎に運んできた。鈴木静海と中村楽は書斎にいた。
鈴木静海はパソコンの前で仕事をしており、中村楽は電話中だった。中村楽が電話を切ると、男は「お粥を飲んで胃を温めなさい」と声をかけた。
中村楽は痛む こめかみを揉みながら、一日中忙しかった体は限界に達していたが、鈴木静海はまだ仕事に追われていた。
彼女は知らなかった。軍を離れた鈴木静海が、自分のビジネス帝国を築き上げ、こんなにも忙しい生活を送っているとは。
こんなに命を削るような働き方をして、自分の命も顧みないつもりなのか?
中村楽はお粥を一杯手に取り、すぐに飲み干した。鈴木静海がまだ手をつけていないのを見て、ため息をつきながら「こんなに長く働いているんだから、少し休んでお粥を飲んだら?」と言った。