「これは明石光宗の意思なの?」久我月は松原蘭の言葉を遮った。
明石光宗が実の父親ではないと知ってから、彼女の中に残っていた最後の忍耐も消え失せていた。
「どうして...」お父様の名前を呼び捨てにするなんて。
久我月は目尻を上げ、いらだたしげに言った。「もういいわ。そんな芝居がかった態度は必要ないわ。私の母のことは、あなたたちには何の関係もない。自分のことを心配した方がいいんじゃない?」
「何が言いたいの?」松原蘭は怒った。
久我月の表情は淡々として、声音も冷たかった。「もし娘を一橋家に嫁がせたいなら、もし明石奥様でいたいなら、余計な考えは持たない方がいいわ」
そう言って、電話を切った。
彼女は何事にも無関心だったが、池田滝たちは皆知っていた。久我月の目は毒だということを。