以前日出秀が処方した軟膏には何の問題もなかったのですが、その中の三つの生薬がペスト菌株配列のE484Qと拮抗していたため、藤若様の心拍数が低下してしまったのです。
これは池田滝が先ほど送ってきた最新情報です。
菌株の変異により、藤若様の皮膚の潰瘍は、ペストによる皮膚潰瘍とは若干異なる様相を呈しており、当然投薬も異なってきます。
「はい」
日出秀は頷き、藤若様の傷の手当てを始めました。
鈴木月瑠は両手で同時に、銀針を流星のように藤若様の前胸部や下腹部などのツボに刺していきました。
他の銀針は常に藤若様の心脈を守り続けています。
藤若様の手のひらと足の裏の銀針の周りから、血が少し滲み出てきました。
血は最初鮮紅色でしたが、やがて暗赤色に変わり、最後には黒青色になり、まるで体に塗られた絵の具のようで、さらに奇妙な酸っぱい匂いを放っていました。