一橋貴明は素早くパソコンを操作し、周りの数人は追跡を中止した。
リビングにキーボードの音が響き、一橋貴明の技術が優れていることと、鳳古平が意図的に警戒を緩めたこともあり、30分もしないうちに、一橋貴明は一つの範囲を特定した。
しかし、これらの場所は全て暗号化されており、完全に解読して初めて位置を特定できる。
一橋貴明の目には怒りが溢れ、男は唇を引き締めて位置の解読を始めた。
無数の緑色のコードが点滅し、さらに5分後、赤いIPアドレスが地図上で点滅した。
「見つけた」
一橋貴明は口角を引き上げ、立ち上がってスーツの上着を手に取り外に向かおうとした。
鳳紅裳は彼を止めた。「今行くの?」
一橋貴明は何も言わなかったが、その意図は明らかだった。
「私が行くわ。小春沙耶は私には手を出せないし、あなたが行けば兄を怒らせることになるわ」鳳紅裳は目を細め、その瞳には冷気が漂っていた。
一橋貴明は鳳紅裳を一瞥し、目に血の色が過ぎり、唇を一文字に結んだ。
彼は鳳古平が帝都にいることを確信していたが、鳳古平を警戒もしていた。今の彼の身分はまだ明かせないのだから。
鳳紅裳が行くのも悪くない。
「賛成だ。裳に行かせた方が確実だ」
池田滝が前に出て、一橋貴明に向かって言った。「どうしても行きたいなら、裳の後ろについて行けばいい」
彼らは隠れ園に残らなければならない。鳳古平という男が何をするか分からないのだから。
他の人々も異議はなく、全員が一橋貴明を見た。
一橋貴明はゆっくりと頷いた。「いいだろう」
「月瑠姉に何をしたのか、見てやるわ」鳳紅裳はゆっくりと口を開き、黒い瞳には前例のない冷たさが宿っていた。
彼女は純粋で善良そうに笑っていたが、よく見ると不気味さと血気が混ざっていた。
一橋貴明は別の車に乗り込み、怒りを抑えていた。
鳳紅裳が隠れ園の門を出ると、中村少華の部下たちが門で待機しており、全員が銃を担ぎ、身に纏う殺気は冷たかった。
彼女は先頭のジープに乗り込み、漆黒の瞳を細めた。
数台の車が壮大に京都郊外へと向かった。
一橋貴明の車は最後尾を走っていたが、車列が少し進んだところで、黒いマイバッハがどこからともなく現れ、一橋貴明の車の後ろについた。