鈴木月瑠は面倒くさそうに住所を見て、口角が引きつった。
これは遠藤家じゃない?
遠藤音美が注文したの?
鈴木月瑠は突然舌打ちをして、指先で画面をタップした。
遠藤信之は横を向いて彼女を見た。「包装して送るのを手伝おうか?」
「いらない」
鈴木月瑠は意味ありげに口角を上げ、目尻に艶やかな光を宿しながら、ゆっくりと言った。「池田滝に任せればいいわ」
池田滝はまぶたを少し持ち上げた。「……」
その後、WeChatで住所を受け取り、開いて見た。
あー……
池田滝は顔を上げて鈴木月瑠を見つめ、からかわれたような表情を浮かべた。
「ちゃんと送ってね」鈴木月瑠は彼の肩を軽く叩き、巻かれた巻物を池田滝の手に渡した。
池田滝は口角が引きつり、呆れ果てた様子だった。
遠藤信之は何事もないかのように口を開いた。「東京書道協会で級別コンテストがあるんだ。S級を取れば書道大会に参加できて、賞金もかなり良いらしい」
お金の話が出ると、鈴木月瑠の目が確かに輝き、遠藤信之を見つめながら淡々とした声で尋ねた。「いくら?」
遠藤信之は口角を緩めた。「優勝賞金は一千万円で、S級の評価だけでも五十万円の賞金がある」
他の順位の賞金額は言う必要もなかった。鈴木月瑠が参加すれば、間違いなく優勝を狙いに行くだろう。
書道は歳月をかけて磨かれるものだが、それが原因で漢方医学と同様に衰退してしまった。
だからこそ、書協が出す賞金は魅力的だった。
「いいわ」
鈴木月瑠は金を稼ぐチャンスを逃さず、遠藤信之に尋ねた。「どうやって応募するの?」
どうせ帝都で開催されるなら、人手も物も省けるし、指を動かして字を書くだけで、プログラミングや研究開発より稼げる。
遠藤信之は言った。「作品を一点書いて東京書道協会に送れば良い。締め切りは月末だ」
鈴木月瑠は頷き、眉を少し上げた。「じゃあ今一点書くから、池田滝に持って行ってもらおうかしら」
傍らの池田滝は「……」
池田滝は書道作品を梱包して発送した。差出人は匿名で、遠藤音美はすぐに荷物を受け取った。
開けてみると、やはり小原舟大師の作品だった!
「音美や、パンを争わなくても意地は争わないとね、しっかり練習するのよ!」遠藤母さんは遠藤音美の肩を叩き、目に喜色を浮かべた。
遠藤音美は頷き、口角の笑みを深めた。
……