第524章 まさかあなたが私より渣男だなんて

一橋貴明も彼女を見つめているのを見て、鈴木月瑠は瞬きをして、柔らかい声で言った。「本当に喉が渇いた、水が飲みたい」

一橋貴明は彼女のその声に誘惑され、ますます耐えがたくなった。

彼は目を伏せて彼女の手首を見つめ、薄い唇を動かし、低い声で言った。「手を離してくれないと、水を注げないよ」

鈴木月瑠は目が覚めたと思っていたが、この時になって彼は気づいた。目は覚めているが、どうやら酔っているようだった。

声まで変わって……

一橋貴明は唇を引き締め、喉仏が上下し、自分も少し喉が渇いてきたことに気づいた。

「あぁ、じゃあ行って」

鈴木月瑠は素直に手を離し、彼を見つめた。

その眼差しは、今すぐにでも……一橋貴明を寝取りたいとでも言うようだった！

一橋貴明は彼女の視線に深く息を吸い、きれいなコップを持って水を汲みに行き、手を伸ばして鈴木月瑠を支え起こした。「冷ましたから、熱くないよ」

鈴木月瑠は機械的に水を飲み干し、後ろに倒れ込み、潤んだ瞳で、髪が少し乱れていた。

彼女は天井を見つめ、目はかなり散漫で、呼吸が少し荒かった。

「もう飲まない？」一橋貴明は優しく尋ねた。

鈴木月瑠は首を振った。

一橋貴明が立ち上がろうとした時、また鈴木月瑠に手首を掴まれた。

彼は鈴木月瑠の朦朧とした目を見下ろし、心の中の痒みを抑えながら、低い声で言った。「どこか具合が悪いの？それとも他に何か欲しいものがある？」

一橋貴明は鈴木月瑠のお酒の強さを信じていて、どんなお酒でも大丈夫だと思っていたが、予想外だった……

彼女は赤ワインが飲めなかったのだ！

なのになぜ彼女は無理して赤ワインを飲もうとしたのか？

鈴木月瑠はいつも冷静さを保ち、警戒心が強かったが、酔うと、まるで柔らかな白うさぎのようになった。

一橋貴明は薄い唇を曲げ、手を伸ばし、彼女の眉目を撫でようとした時。

鈴木月瑠が突然顔を上げて彼を見た。

目が合い、一橋貴明の胸が震え、何か言おうとした時、鈴木月瑠が突然まっすぐ起き上がった。

彼は眉を上げ、鈴木月瑠が何をしようとしているのか分からなかった。

鈴木月瑠は小さな手を伸ばし、一橋貴明の顔に触れた。

彼女はまず男の眉と目に触れ、それから彼の鼻をつまんで揺らした。

最後に、視線は彼の唇に落ちた。