「分かっています。全部分かっています」
一橋貴明の声はより一層低くなった。「君の兄さんから聞いたんだが、巫族の歴史上で確かに宿命論が現れたことがあった。それは巫族がまだ十分に強くなかった時代のことだ」
「そう、巫族の嫡女と霊族の若君が婚姻を結び、二大古代民族の百年の友好を続けたんだ」
「その後も巫族は霊族との婚姻を続け、巫族はますます強大になり、ついに霊族に代わって第一の古代民族の地位を獲得した」
「しかし、その間の数百年間は、宿命論なんて現れなかった」
「なのに、この時期にまた所謂宿命論が現れた。私と君の兄は、誰かが裏で糸を引いているのではないかと推測している」
なぜなら、最初に宿命論が現れた時、巫族はまだ十分に強くなく、霊族に頼って初めて足場を固めることができたからだ。