一橋諭知に手を振って別れを告げた後、鈴木月瑠はバッグを持って海浜市で最も繁華なオフィス街へ向かった。
ここはインターネット産業が集まる場所で、多くの企業がスマートロボットの研究開発を行っていた。鈴木家が先駆けて開発に成功したこの製品に、多くの投資家が興味を示すことは間違いないだろう。
しかし、彼女が中に入ろうとした瞬間、携帯電話が鳴り始めた。
着信表示を一瞥すると、彼女の表情は一気に曇った。養父の鈴木尊からだった。
昨夜にも怒りの電話がかかってくると思っていたが、まさか一晩経ってからこの電話がくるとは思わなかった。
無視するわけにもいかず、唇を噛みしめながら通話ボタンを押した。
「20分以内に会社に来い!」
鈴木尊は冷たくそう言い放つと、すぐに電話を切った。
鈴木月瑠は携帯を握りしめ、心の中に寒気が走るのを感じた。