「一橋社長、続けてもよろしいでしょうか?」
幹部社員が慎重に尋ねた。
一橋貴明は冷たく頷いた。「話せ」
「今回のテープカットセレモニーでは、従来の形式を覆し、インターネットを活用して…」
この社員は責任を持って報告していたが、明らかに聞くべき人は聞いていなかった。
一橋貴明は長く美しい指先を伸ばし、鈴木月瑠のプロフィール写真をタップした。
それはモノクロのシルエット写真で、背景は夕日が沈みかけていた。女性の横顔が夕日に照らされ、繊細で美しく見えた。
輪郭だけでも、人の視線を引きつけるほどだった。
突然…
彼女に会いたいと思った。
それは前例のない渇望だった。
一橋貴明は冷たい瞳を上げた。「今日の会議はここまでだ。次回に続ける」
彼は立ち上がり、長い足で歩き出した。
会議室の人々は顔を見合わせた。