第709章 この女、本当に演技が上手いな!

「一橋社長、続けてもよろしいでしょうか?」

幹部社員が慎重に尋ねた。

一橋貴明は冷たく頷いた。「話せ」

「今回のテープカットセレモニーでは、従来の形式を覆し、インターネットを活用して…」

この社員は責任を持って報告していたが、明らかに聞くべき人は聞いていなかった。

一橋貴明は長く美しい指先を伸ばし、鈴木月瑠のプロフィール写真をタップした。

それはモノクロのシルエット写真で、背景は夕日が沈みかけていた。女性の横顔が夕日に照らされ、繊細で美しく見えた。

輪郭だけでも、人の視線を引きつけるほどだった。

突然…

彼女に会いたいと思った。

それは前例のない渇望だった。

一橋貴明は冷たい瞳を上げた。「今日の会議はここまでだ。次回に続ける」

彼は立ち上がり、長い足で歩き出した。

会議室の人々は顔を見合わせた。