第726章 悪さをしておきながら正義ぶる

一橋貴明の眼差しが一瞬で冷たくなった。

彼はゆっくりと口を開いた。「大橋新民、君はポリテク株式会社でよくやっていたな。」

大橋社長は頭から汗を流し、心虚ろに俯いて言った。「いいえ、まだまだ改善すべき点が多くて...」

「ポリテク株式会社は一橋家のほんの小さな子会社に過ぎない。君の才能はまだ完全に発揮されていない。明日から、君は一橋家の城南地区の総支配人として、六つの子会社の運営を管理することになる。今日の午後にでも報告に行くといい。」

一橋貴明の言葉を聞いて、大橋社長はすっかり呆然としてしまった。

子会社の社長から地区の総責任者へ、これは...昇進のはずだよな？

なのにどうして、自分が左遷されたような感覚を覚えるのだろう？

「おめでとうございます、大橋社長！」

鈴木月瑠は心から祝福の言葉を述べた。

大橋社長と一緒に働いたのはわずか数日だったが、彼女は大橋社長の仕事の専門性を感じ取り、多くのことを学んでいた。

大橋社長は無理に笑顔を作って言った。「一橋社長の抜擢に感謝します。」

災いが転じて福となるのか、これが本当に幸運なのかどうかはわからない。彼は本当に笑顔を作ることができなかった...

「地区はここから一時間の距離だ。今すぐ行くといい。」

一橋貴明は冷たく言った。

大橋社長はもはや留まる勇気もなく、頭を下げて急いで立ち去った。

広々とした長い廊下には、二人だけが残された。

鈴木月瑠は少し気まずく、話題を探して言った。「昨夜のスーツはクリーニング店に出しました。今日の仕事が終わってから取りに行けるので、明日の午前中に一橋社長にお持ちしましょうか。急いで着る必要はないですよね...」

一橋貴明は漆黒の瞳で彼女を見つめ、美しい薄い唇に冷たい笑みを浮かべた。

「大橋新民には妻がいるのを知らないのか？」

鈴木月瑠は一瞬驚き、眉をひそめた。「一橋社長、それはどういう意味ですか？」

「妻のいる男性からは距離を置いた方がいい。」一橋貴明の声は冷たく沈んでいた。「今日のようなことが二度と起こらないことを望む。」

鈴木月瑠の胸の中の火がすぐに燃え上がった。